細草書林

「疑に三種あり、一には自らを疑ひ、二には師を疑ひ、三には法を疑ふ」(日寛上人『寿量品談義』)

『社会学・第五版(2009年)』(アンソニー・ギデンズ):「第20章 政治・統治・テロリズム」冒頭部より引用

(投稿者注記:この文献は、異流義教団・顕正会の政治学的所見が如何に稚拙であるか、そのための引用となります。特に、顕正会では「王法=主権」という単純化された認識なのですが、この文献の「主権という概念は、伝統的国家では意味をなさなかった」という記述に着目いただきたいと存じます。)

 

政治社会学の基本概念をめぐる議論

 

政治、統治、国家


多くの人々は政治とは〔イギリスの議会議事堂がある〕ウェストミンスターや、〔EU議会がある〕ブリュッセル、〔アメリカの連邦議会がある〕ワシントンにいる―ほとんどの場合―中高年男性たちの領分であり、自分たちとは無縁な、興味のないことがらと考えている。

 

こうした見方によれば、「政治」は、権力が統治活動の範囲や内容に影響を及ぼすために使用される際の手段と関係している。

 

しかしながら政治とは、議論の余地がある概念であり、政治的なことがらの領域は、国家制度そのものの領域をはるかに超えて拡がる場合がある。

 

この章の初めで触れた反戦運動(※引用者注:イラク戦争への反戦運動)は、この本の他のところで論じてきた(環境保護やフェニミズムなどの)グループやネットワーク、組織の多くがそうであるように、政治的な運動である。

 

とはいえ、好むと好まざるとにかかわらず、私たちの生のすべては―統治活動という狭い意味においてさえ―政治の領域で起きていることの影響を受けている。

 

政府は極めて個人的な活動にたいして口を出し、戦争時には政府の必要とみなす目的のためなら、私たちの命を捨てるように命ずることさえできる

 

「統治」の領域は政治的権力の領域である。政治的活動は、すべて権力とかかわっている。

 

誰が権力を手中に収めるのか、どうやって権力を手にするのか、手にした権力で何を行うのか、以下で権力の概念をさらに詳しく検討する。

 

「国家」が存立すると言えるのは、一定の領土を支配する政治的統治装置(議会のような機構と、公務員の組織)が存在し、その権威が法体系によって、また政策遂行のために警察力・軍事力を行使できる能力によって裏づけられている場合である。

 

近現代の国家はすべて「国民国家」である。つまり、近現代の国家は一定地域に住む国民の多数がみずからを単一国民社会の一員とみなす市民たちから構成される国家である。

 

国民国家は世界のさまざまな地域でそれぞれ異なる時期に成立してきた。例えば、アメリカ合衆国は1776年に、チェコ共和国は1993年に誕生した。

 

国民国家の主要な特徴は、第二章『グローバル化と、変動する世界』で取り上げた、非工業文明や伝統文明における国家の特徴とかなり際立った差異を示している。

 

国民国家の主要な特徴

 

(1)《主権》伝統的国家が支配する領土は、その境界がつねに不完全であったため、中央政府の及ぼす統制の度合いはきわめて弱かった。《主権》という概念―行政府が、明確に境界規定された領域にたいして権威を確立し、その領域内で最高の権力になること―は伝統的国家では意味をなさなかった。対照的に国民国家は、すべて主権国家である。

 

(2)《市民権》伝統的国家では、国王や皇帝が支配する住民のほとんどは、自分たちを統治する人びとについてほとんど何も認識していなかったし、関心もなかった。住民はまた、政治的権利や政治的影響力をまったくもっていなかった。政治共同体にたいして共属感情をいだいていたのは、通常、支配階級か、かなり裕福な集団だけだった。

 

対照的に、近現代の社会では、その政治システムの境界内で暮らすほとんどの人たちは、共通の権利と義務を保有して、自分たちが国民社会の構成要素であることを認識している《市民》である。政治的亡命者や「無国籍」者も一部には存在するが、今日の世界では、ほぼ誰もが国民社会という明確な政治秩序の構成員になっている。

 

(3)《ナショナリズム》国民国家は、ナショナリズムの勃興と関連している。ナショナリズムとは、「自分は単一の政治共同体の成員である」という意識をもたらす一連の象徴や信念である、と定義づけることができる。したがって、人びとは、イギリス人やアメリカ人、カナダ人、ロシア人等々、その単一共同体の成員であることに誇りや帰属意識をいだいている。こうした誇りや帰属意識は、東ティモールの人たちが独立を求めたときに弾みを与えた感情である。

 

おそらく人びとは、伝統的国家の中にあっては、いろいろな種類の社会集団―たとえば、家族や村落、宗教集団―にたいして、つねに何らかの種類のアイデンティティをいだいてきた。

 

ところが、ナショナリズムは近現代国家の発達によってはじめて出現した。ナショナリズムは、明らかに他と異なる主権共同体にたいするアイデンティティという感情・信念の、主要な表出である。